近年,スマートフォン等の普及によって,サービス利用者の位置履歴情報が大量にアップロードされ,蓄積されるようになってきました.ポピュレーションスケールの匿名化された位置履歴情報を用いることで,都市の動態解析が可能になり,スマートシティが標榜する,データに基づく都市設計への展開が期待されます.
例として,従来,調査員を雇って数取器(カウンター)によって行われていた交通量調査を位置履歴データを用いて代替する手法を構築しました[Nishi+@SIGSPATIAL2014].
100万人を超す利用者のいるような大規模なアプリ利用者の位置履歴データがあれば,あるエリアの人口を予測できそうに思われます.しかしながら,人口を知りたい対象エリアや対象時間帯が狭ければ狭いほど,データはまばらになり,人口の予測は困難になります.そういった問題を解決し,いつでもどこでも低コストに人数を把握する方法を構築しました.また,位置情報の前後の関係を使って,電車や自動車を利用している人のデータや屋内に滞在している人のデータを除外することで,歩行者のみの人数を正確に推計することも可能にしました.
さらに,エリアごとのアプリ利用者数を元に土地利用特性のパターンを抽出する方法を構築しました[Nishi+@Urb-IoT2014].また[Nishi+@Urb-IoT2014]の手法を拡張し,エリア間で共通する土地利用特性のパターンとエリア固有のパターン頻出頻度をモデル化することで,より精度よくパターンを抽出するモデルも構築しました[下坂ら@JSAI2015].似た特性を持つエリア間でのデータの共有を共有することで,より精緻なパターン推定が期待できます.そこで我々はパターンの推定,及びエリアの分類を同時に行うモデルを提案し,パターン推定の性能向上,及び妥当な地域分類結果が得られることを確認しました[Shimosaka+@ECML-PKDD2016].
そのエリアが「いつ」「どれくらい多くの人」に使われているか,という情報は土地の利用特性を反映しています.エリアの利用特性パターンを位置履歴情報から発見することで,サービスや屋外広告,店舗やイベントの企画に活用することができます.土地利用人数のパターンを転用することで,データが少ないエリアでも人数推定の精度も向上することもできます.
また,天気,曜日,土地属性 (オフィス街,住宅地など)といった外的な情報を利用し,注目地域の人口推移を高精度に予測する手法を構築しました [Shimosaka+@UbiComp2015].この手法を用いることで,土地属性を変化させた時に人口推移がどのように変わるのか,といったシミュレーションを行うことができます. さらに[Shimosaka+@UbiComp2015]のモデルの最適化の安定化を図るため,核ノルムを正則化に加えた凸最適化の枠組みも試みています.[下坂ら@JSAI2016]
Publications
Kentaro Nishi, Kota Tsubouchi, Masamichi Shimosaka.
Extracting Land-Use Patterns using Location Data from Smartphones.
The First International Conference on IoT in Urban Space (Urb-IoT 2014) 2014.
Kentaro Nishi, Kota Tsubouchi, Masamichi Shimosaka.
Hourly Pedestrian Population Trends Estimation using Location Data from Smartphones Dealing with Temporal and Spatial Sparsity.
The 22nd ACM SIGSPATIAL International Conference on Advances in Geographic Information Systems (SIGSPATIAL 2014), 2014
下坂 正倫,築地 毅,坪内 孝太,西 賢太郎,前田 啓輔.
携帯電話から得られる大規模な位置履歴情報を用いた都市動態モデリング.
2015年度人工知能学会全国大会(第29回),2015.
Masamichi Shimosaka, Keisuke Maeda, Takeshi Tsukiji, Kota Tsubouchi.
Forecasting Urban Dynamics with Mobility Logs by Bilinear Poisson Regression.
The 2015 ACM International Joint Conference on Pervasive and Ubiquitous Computing (UbiComp 2015), 2015.
下坂 正倫,和田 英之,坪内 孝太,築地毅.
モバイル端末位置履歴を用いた都市動態予測のための核ノルム最小双線形ポアソン回帰.
2016年度人工知能学会全国大会(第30回),2016.
Masamichi Shimosaka, Takeshi Tsukiji, Shoji Tominaga, Kota Tsubouchi.
Coupled Hierarchical Dirichlet Process Mixtures for Simultaneous Clustering and Topic Modeling.
The European Conference on Machine Learning and Principles and Practice of Knowledge Discovery (ECML-PKDD 2016), 2016.