2025年2月27-28日に, 第85回ユビキタスコンピューティングシステム(UBI)研究発表会が, 大阪大学中之島センター にて開催されます.我々は本研究会にて, 以下の論文の発表を行います.
1. AoA Estimation from Array of Single-board Devices with Single-antenna Wi-Fi chip
電波の到来角度 (Angle of Arrival; AoA) 推定は, 特にWi-Fiパケットから得られるチャネル状態情報(Channel State Information; CSI) を活用した屋内測位システムにおいて,重要な技術として広く注目されています. 従来の手法では, 複数アンテナを備えたMIMO(Multi Input Multi Output)デバイスを利用し, 異なるアンテナ間のパケットの到達時間差を解析するMIMOベースのアプローチが一般的でした.
しかし, MIMOデバイスは生産が終了しており, 入手が困難になりつつあります. 一方, シングルボード型 (Single-input Single-output; SISO) のCSIスキャナは, 正確なAoA推定を行う上で課題があります.
本研究では, 複数のSISOデバイスを一直線状に配置し, 同一Wi-FiパケットからCSIを取得する新しいAoA推定手法を提案します.
取得した測定データを統合し, その後, 学習ベースのAoA推定モデルを適用することで角度推定を行います.
複数の実験により, 本手法が良好なAoA推定性能を達成し, 最適な設定では誤差が4.14度であることを確認しました. また,異なるデバイス数, デバイス間隔, 受信機と送信機の距離の影響を含む, さまざまなデバイス構成についても検証しました.同一直線上に配置されたSISOデバイスの数を増やすことで, より高い性能が得られることを示しました.
本手法は, 容易に入手可能なデバイスを活用しながら高い信頼性を持つAoA推定性能を提供できるため,将来的には無線データパケットからAoA情報を抽出する研究の基盤的実装として活用されることが期待されます.
2. 複合ウェアラブルセンサによる物体操作認識の検討
近年,日常におけるライフログの獲得は,高齢者の体調評価や行動最適化への応用の観点で重要視されています.中でも手による物体操作の認識は,手が生活の中で多くの物体との相互作用を行うことから,詳細なライフログをもたらすため,注目されています.
しかし,従来の物体操作認識の研究は,単一種類のセンサを用いる手法[が一般的であり,各センサごとに存在する獲得可能な情報の限界により,認識が困難な動作が存在することや,その認識性能に課題となっています.
本研究では,操作対象を認識するイメージセンサ,手指の形状と動きを認識する超音波センサ,腕の軌道と手の動きを認識するIMUセンサの3種類を統合した,物体操作に関する主要な情報を網羅する認識システムを提案しました.また,本システムにおけるセンサ配置の影響の調査を行いました.
提案システムに用いるセンサの組み合わせごとの認識精度を比較し、センサ構成が与える影響と本システムの優位性の示しました.加えて,提案システムにおいて,設置箇所の依存度が特に大きいと考えられるイメージセンサの配置に着目し,複数の配置での提案システムの認識精度を比較することで,提案システムにおけるイメージセンサ配置と認識性能の関係性を示しました.
発表情報 (詳細プログラム)
2025年2月27日(木) 12:30〜14:10 位置推定技術
AoA Estimation from Array of Single-board Devices with Single-antenna Wi-Fi chip
庄 世元, 林 瀚 (東京科学大学), 坪内 孝太 (LINEヤフー株式会社), 西尾 信彦 (立命館大学), 下坂 正倫 (東京科学大学)
2025年2月28日(金) 10:40〜12:00 行動認識技術
複合ウェアラブルセンサによる物体操作認識の検討
藤重 凱人, 北森 迪耶, 林 瀚, 下坂 正倫 (東京科学大学)