スマートフォン等の普及により収集された大量のデータを解析することで,人々が外出の際「どこに向かうのか」を予測することができるようになります.特に,なるべく早期に予測を行うことは,ユーザに対してより適切な情報を提示するほか,HEMSやBEMSへの応用など日々の生活向上に大きく貢献すると考えられます.
既に日々の位置履歴データから生活パターンをモデル化し,「いつどこにいるか」を推定する枠組みと,経路を観察することで逐次的に目的地を絞り込む枠組みが並行して提案されていますが,前者は周期的な生活行動とは異なる行動を予測することができない,後者は経路が短い移動の初期段階では精度が低いという問題があります.
そこで,私たちはこれら2つのアプローチのそれぞれの問題を補い「いいとこどり」を可能とする統計的モデルを提案しました.このモデルでは,目的地予測に用いる要素を滞在情報と経路情報の2つに分割して扱います.
まず初めに,滞在情報に加え,現在の経路と,出発地の最寄り駅から到着候補の各駅までの路線の一致度を考慮することで,電車移動に対して高精度な目的地予測を行うことを可能にするモデルを構築しました[小西ら@SigUbi49].
また,[小西ら@SigUbi49]のモデルを拡張し,現在の経路と,過去の経路との一致度を比較する予測手法を取り入れることで,電車移動によらず,あらゆる移動手段に対して高精度な予測が可能な統計的モデルを構築しました.これにより,電車移動では対応できなかった,カーナビや歩行者に対する経路誘導などへの応用が期待できます[Imai+@IMWUT2017].加えて,目的地予測の様子を可視化することにより,私たちの提案手法の性能向上の理由を定性的に評価しました[今井ら@SigUbi58].
Publications
滞在時間帯と経路情報を用いた混合最大エントロピー逆強化学習に基づく早期目的地予測
情報処理学会研究報告 第78回MBL・第49回UBI合同研究発表会, 2016
Ryo Imai and Kota Tsubouchi and Tatsuya Konishi and Masamichi Shimosaka
Early Destination Prediction with Spatio-temporal User Behavior Patterns.
Proceedings of the ACM on Interactive, Mobile, Wearable and Ubiquitous Technologies, Vol. 1, No. 4, pp. 142:1–142:19, 2017.
今井 遼, 坪内 孝太, 小西 達也, 下坂 正倫.
大規模ユーザの時空間滞在・経路パターンに基づく早期目的地予測.
情報処理学会研究報告 第58回UBI合同研究発表会, 東京都千代田区, 5 2018.