屋内ユーザ密集度モニタリングアプリのためのBLEビーコンの適応的配置最適化に関する論文が,Proceedings of ACM on IMWUTに掲載されましたのでお知らせします.本論文は,川原研究室(東京大学),ヤフー株式会社との共同研究成果になります.
本研究は,東京大学で開発が進められているBLEベースの屋内混雑度確認アプリ「mocha」における初期導入・性能保守に伴う人的コストの効率化を狙って開発を進めました.
論文の概要
屋内の過密状況を防ぐ有効な手段の一つとして,BLEビーコンを用いた屋内群集密度モニタリングシステムがあります.一般に屋内混雑状況モニタリングシステムは,ユーザー側のモバイルアプリケーションとインフラとしてのビーコンセンサーネットワークで構成されています.
一方,このBLEに基づくモニタリングの性能は,BLEビーコンの配置の仕方に大きく依存しています.そのため,BLEビーコンの配置最適化はよく研究されている話題でもあります.本研究では,ビーコンの電波の伝搬状況を効率的に推定しながら,逐次的にビーコンを配置する,いわば適応的にセンサを配置するアルゴリズムを提案しました(EABeD).この手法はベイズ最適化と巡回セールスマン問題の双方を適用し,計測回数そのものだけでなく,歩行経路長も抑えることで,人的コスト(時間方向の負荷)の軽減を達成します.
実際に東京大学総合図書館といった実際の環境下で,ビーコン配置最適化実験を行い,シミュレーションによる手法やBLEビーコンアプリケーションの開発者による配置と比較し,性能を検証しました.その結果,提案手法はシミュレーションベース手法よりも26.4%,未経験者(BLEの性質をあまり把握していない理系学生)の配置よりも23.2%, 上記の専門家の配置よりも5.2%以上高い検出率を達成できることが分かりました.
この論文はACMのウェブサイトよりご覧になれます.
なお本論文の内容を,本年秋に開催されるユビキタスコンピューティングのトップ会議, ACM UbiComp2023でも紹介する予定です.