お祭りや花火大会といった公共イベントの人出を予報することは,その実応用上の重要性から,近年注目を集めています.特にイベント下の人出の予報は,イベントにおける来訪者の購買需要の予測に利用できますし,会場周辺の人出を事前に知ることができれば,混雑に起因した混乱の回避にも応用できます.
では,多くの来訪者で賑わうイベントの条件はなんでしょうか?一般には,イベントの内容が魅力的であり,会場へのアクセスがよく,また週末の晴れた日に開催されるイベントに,多くの人々が集まると考えられます.
既存の人出予測手法では,このようなイベントの開催条件から,予測に効く情報をリストアップし,特徴量を設計する戦略がとられていました.しかし,特徴量の設計や選択には,イベントの開催に関する専門知識を必要とします[Getz, 2019].そのため,これまでの取り組み[Yamashita, ESWA 2022; Al-Buenain+, Math. 2024]では,スポーツの試合といった一部のイベントでのみ人出の予測が実現されており,特徴量エンジニアリングのコストの面から,その他多くのイベントに対して既存の手法を適用することは困難でした.
この課題を解消するために,本プロジェクトでは,イベントの告知情報に着目します.イベントの告知情報は,イベントの詳細な内容に関する説明を含むため,人出の予測に有益であると考えられます.一方,告知情報の形式はイベントごとに様々であるため,種々のイベント間で統一的に扱うことができません.そこで,我々はさらに大規模言語モデルを活用して,告知情報を統一的なフォーマットに変換し,テキスト埋め込みベクトルに変換することで,イベントの開催条件を記述することのできる,統一的で効果的な特徴量を提案しました.
実際の人流ログデータ・イベントの告知情報を用いて,東京周辺の24会場305個のイベントに対して性能評価実験を行い,提案手法が様々な種類のイベントに対して,既存手法を大幅に上回る予測性能で人手を予報可能であることを示しました.
Publications
Soto Anno, Dario Tenore, Kota Tsubouchi, and Masamichi Shimosaka.
Are Crowded Events Forecastable from Promotional Announcements with Large Language Models?.
SIGSPATIAL’24: Proceedings of the 32nd ACM SIGSPATIAL International Conference on Advances in Geographic Information Systems, Atlanta, GA, USA, Oct. 29 – Nov. 1. 2024. (To appear)
安納 爽響, 坪内 孝太, 下坂 正倫.
イベント告知情報と大規模言語モデルに基づく イベント会場周辺の早期群衆混雑予報
情報処理学会研究報告 第82回UBI合同研究発表会, 鹿児島県熊毛郡, 5 2024.