測位端末を携帯していなくても,屋内環境中全ての人の測位を可能にするデバイスフリー屋内測位は,様々なアプリケーションに利用できるため,研究されています.
中でもカメラを使用した測位は,社会でも多く利用されていますが,プライバシーに配慮できておらず,家の中など設置が向かない場所があるといえます.そのような中,水平に設置した送受信機間の通信への人体による電波干渉に注目し,人の位置を測位する手法[1]を提案してきました.この手法は,人体による電波変化情報には,プライバシーに関わる情報が含まれないため,前述の問題を解消しているといえます.しかし,この手法は,人体の活動する高さに電波送受信機を配置する関係で,人以外の家具などの電波干渉が,誤認識を引き起こしやすいという問題があります.そのため,現実的な屋内環境に簡単に対応することはできません.
そこで,本プロジェクトでは,天井設置UWB (Ultra Wide Band) 機器で取得される床からの反射波を利用したデバイスフリー屋内測位を提案します.UWBは,非常に短い時間幅のパルス信号によって得られるCIR (Channel Impulse Response) によって,高い粒度でのセンシングが可能な電波です.天井から地上の人物までに障害物はないため,この方式は,家具の多い環境でも問題なく動作することが期待されます.一定範囲の地上の人検知が可能な機器を各測位対象地点の天井に設置することによって,屋内全体での測位が可能になります.
本プロジェクトでは,天井に一箇所設置したUWB機器で取得されるデータを用いて,地上の人物の状態検知精度,範囲限界を明らかにし,天井設置UWBセンシングの有効性を示しました[2].
— 関連論文 —
[1] Atsushi Nomura, Masato Sugasaki, Kota Tsubouchi, Nobuhiko Nishio, Masamichi Shimosaka.
Device-Free Multi-Person Indoor Localization Using the Change of ToF, The 21st International Conference on Pervasive Computing and Communications (PerCom 2023)
— 発表論文 —
[2] 野村篤史, Han Lin, 坪内孝太, 西尾信彦, 下坂正倫.
天井設置UWBセンシングによるデバイスフリー屋内行動測位・認識.
情報処理学会研究報告 第79回UBI研究発表会, 長崎県長崎市, 9 2023.