The 13th International Conference on Indoor Positioning and Indoor Navigation (IPIN) が,ドイツニュルンベルクにて9月25日〜28日に開催される予定です.
IPINは,ユビキタスコンピューティングの中核的な基盤の一つである屋内測位技術に関する会議の一つです.今回は以下の発表を行います.
本研究は,ヤフー株式会社と東京大学川原先生のグループとの共同研究の成果になります. 研究室では,主に下川さん(2022年度 情報理工学院 情報工学系 修士課程修了)が取り組みました.
屋内環境における無線通信信号強度のデータ駆動型シミュレーション
ユビキタスコンピューティングの分野では,無線電波の受信信号強度(RSSI)のシミュレーションは,屋内測位におけるビーコン(Access point)配置の最適化や電波到達範囲(カバレッジ)最大化の検証に利用できるため重要な話題になっています.
電波伝搬の物理モデリング(Ray Tracining)技術によるシミュレーションは,この課題に対してよく用いられてきました.しかしながらRay Tracingモデルは建造物内の壁・床の反射・透過減衰率といった物理特性を反映して,シミュレーションの正確性を担保できます. 他方,ビーコンを事前にばら撒き,RSSIデータを収集し,RSSIの空間分布をガウス過程等の機械学習によりモデル化する研究も盛んに行われています.しかしながら,ビーコン位置を置き直す度にデータの取り直しが迫られ「ビーコンを仮置きしRSSIデータを生成し所望のサービスの性能を検証する」というシミュレーション本来の用途に利用が難しいという課題がありました.
本研究では,物理的なアプローチに基づくシミュレーションとは異なるアプローチとして,データ駆動型のRSSIシミュレーション手法を提案しました.一旦,建物内に適当にばら撒いたビーコンから,RSSIデータを収集し,その後,後述するニューラルモデルを利用し,任意箇所に設置したビーコンから発したRSSIの空間分布を,高精度にモデリングするものです.一度建物内でのRSSI計測が必要となりますが,任意の場所にビーコンを配置してRSSIシミュレーションを可能にするという点が今までにない新しい点になります.本研究では,ニューラルモデルとして,敵対的生成モデル(Generative Adversarial Network(GAN))およびU-netを活用し,ビーコン配置とRSSIの空間分布の関係を学習します.これにより任意のビーコン位置でのRSSI空間分布の生成を高精度化しました.
本研究で提案した手法の評価として,オフィス環境でRSSIデータを実際に収集し,実際のRSSI値を用いて精度を評価しました.その結果、電波伝搬式を用いたシミュレーションと比較して、RSSI値の平均絶対誤差が8%改善されることを示しました.また,実RSSIデータを一切使わず,シミュレーションデータのみから学習して得られた屋内測位モデルを構築(いわばゼロショット実学習データによる機械学習)したところ,従来のシミュレーションアプローチに比べ,平均測位誤差が19%改善されることを示しました.
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発表情報
September 25th (Mon.) 15:30 – 17:00 A.4 Machine Learning for Localization and Navigation
Data-driven simulation of wireless communication signal strength in indoor environments
Takuhiro Shimokawa*, Kota Tsubouchi†, Yoshihiro Kawahara‡, Hiroaki Murakami‡, Masamichi Shimosaka*
*: Tokyo Institute of Technology
†: Yahoo Japan Corporation
‡: The University of Tokyo