「コロナ禍」といったパンデミック発生時においては,屋内の人の密集度に関する情報が注目を浴びることがあります.BLEビーコンを用いたセンシングはこれらの用途に対して有力な方法の一つとして期待されています.一方,これらのBLEビーコンを用いたトラッキングにおいては,ビーコンの設置位置はシステムの精度に大きく影響することが知られています.大量にビーコンを置けば,モニタリング可能な範囲を確保し,また,測位性能も担保できるかもしれませんが,冗長なそれは,導入・メンテ双方についてコストが増大するという課題があります.従って,過不足なくビーコンを配置する技術,ビーコン配置最適が重要になります.今まで,電波伝搬のシミュレーションに基づいたビーコン配置最適化や,予め大量のセンサをばら撒き,その中から有用なセンサのみを選択するといった手法が提案されてきました.
本研究では,電波伝搬実データを用いたシミュレーション実環境を考慮しながら,ビーコン配置コストとデータ収集コストを抑えることが可能な逐次BLEビーコン位置最適化を情報処理学会UBI研究会で提案しております.大学の施設内にてビーコンを配置し収集したデータセットを用いて,本提案手法の有用性を検証しました[1].
また,ビーコンの追加位置を決定した際にはビーコンの電波の検出範囲を円形と仮定していましたが,実際にビーコンを配置し数点ビーコンの電波強度を収集することで実際の電波マップに近づくように電波マップを修正する手法をSIGSPATIALで発表し,データ収集者のデータ収集にかかる時間の削減が可能であることを示しました[2].
さらに,データ収集時の歩行経路に着目し,巡回セールスマン問題のアルゴリズムを用いてより効率的にデータ収集地点を回ることで歩行距離とデータ収集にかかる時間を削減する手法をIMWUTで発表し,既存手法[2]と比べ,さらに歩行距離が削減可能なことを示しました[3].
また,ビーコンの逐次配置最適化の考え方を,ビーコンの電波到達範囲(カバレッジ)の最大化だけでなく,屋内測位の精度向上に向けた枠組みを,シミュレーション上の実験で提案・有効性を検証しています[4].
—– 発表論文 —–
[1] Yang Zhen, Masato Sugasaki, Yoshihiro Kawahara, Kota Tsubouchi, Masamichi Shimosaka.Incremental BLE beacon placement optimization for crowd density monitoring applications
情報処理学会研究報告 第70回UBI合同研究発表会, Virtual, 6 2021. [2] Yang Zhen, Masato Sugasaki, Yoshihiro Kawahara, Kota Tsubouchi, Matthew Ishige, and Masamichi Shimosaka.
AI-BPO: Adaptive incremental BLE beacon placement optimization for crowd density monitoring applications.
SIGSPATIAL’21: Proceedings of the 29th International Conference on Advances in Geographic Information Systems, Beijing, China, November 2021. [3] Yang Zhen, Masato Sugasaki, Yoshihiro Kawahara, Kota Tsubouchi, Matthew Ishige, Hiroaki Murakami, and Masamichi Shimosaka.
Efficient Adaptive Beacon Deployment Optimization for Indoor Crowd Monitoring Applications.
Proceedings of the ACM on Interactive, Mobile, Wearable and Ubiquitous Technologies. 6, 4, Article 201 (December 2022), 22 pages. [4] 大橋弘一郎, 野村篤史, 下坂正倫.
高信頼測位範囲最大化に基づく屋内測位向けBLEビーコン配置最適化.
情報処理学会研究報告 第79回UBI研究発表会, 長崎県長崎市, 9 2023.